マッサージが痛いのはどうして？痛いとマッサージは逆効果なの？プロが教える「痛気持ちいい」の境界線

マッサージで生じる痛みは、主に二つの原因が絡み合っています。一つは、筋肉内に蓄積された老廃物や炎症物質です。疲労や悪い姿勢によって血行が悪くなると、筋肉の一部が硬いしこり（トリガーポイント）となり、この部分を押されると強い痛みとして感じられます。この痛みは、体内の詰まりが解消されるべき場所を示す「老廃物の叫び」と言えます。もう一つは、脳と神経系の過敏な反応です。慢性的なストレスや睡眠不足は自律神経のバランスを崩し、痛覚閾値を下げます。この状態では、弱い刺激でも脳が痛みを強く認識してしまう、一種の「神経の誤作動」が起こりやすくなります。

マッサージの効果を測る上で重要なのは、痛みの「質」です。
逆効果になる「危険な痛み」：筋肉が圧迫され、思わず息を止めたり、体に力が入ったりするほどの激痛は、避けるべき「危険な痛み」です。この痛みは、体がストレスホルモンを分泌し、筋肉が自らを守るために硬直する「防御反応」を引き起こします。結果として、リラックスできず、筋肉を緩めるどころか緊張を強めてしまい、翌日に強い揉み返しとなって現れる可能性が高くなります。これは、マッサージの目的である「深部からの解放」とは真逆の作用です。

私たちが推奨する「痛気持ちいい」は、凝りの深部に圧が到達していることを示す心地よい刺激です。これは、硬く縮んだ筋繊維が、破壊されることなく、じんわりと引き伸ばされ、滞留していた血液が流れ出す瞬間に感じる感覚です。この感覚を伴う施術は、心身を深いリラックス状態へ導く副交感神経を優位にし、施術後の軽快感を格段に高めます。

マッサージの効果を最大限に引き出し、無駄な痛みを避けるためには、施術中のセラピストとの「対話」が不可欠です。痛みを感じた際には、我慢せず「痛すぎる」「もう少し弱く」と正直に伝えましょう。熟練したセラピストは、お客様の言葉だけでなく、皮膚の反応や呼吸の様子からも体のサインを読み取りますが、明確なフィードバックがあることで、その日のコンディションに合わせた最も効果的な圧で施術を調整することができます。痛みは伝えるべき情報であり、施術者がその情報を基に「お客様のための最適解」を見つけ出すことが、マッサージ成功の鍵となります。自分の体にとっての「痛気持ちいい」境界線をセラピストと共有し、本当の意味で癒やされる時間をお過ごしください。